早いものでBSデジタルが開局して10周年になるそうだ。 BS日テレの開局セレモニーの演出をしてからもうそんなになるかと感慨を受ける。 これから各局でスペシャル番組が編成されることだろう。 その一つでBS朝日の「 刑事定年 」を視た。 柴田恭兵が退職した元敏腕刑事を演じるホームドラマだ。 けっして退職した刑事が事件を解決するという刑事ドラマではない。 再就職はせず、妻との平穏な生活を目指す主人公。 しかし、妻(浅田美代子)は夫ぬきの自分なりの生活を楽しんでいる。 在職中は現場一筋で家庭を顧みなかった夫との生活の中で、自分なりの楽しみを見出していたのだ。 結局ひとりで留守番をする羽目になった主人公の家にはいろいろな来客がある。 元同僚の現役刑事や、昔面倒を見たヤクザの親分…。 第一回はかたせ梨乃扮する「夫を殺したと自白する女」がやってくる。 急に居間が「取調室」となってしまう。 脚本の鎌田敏夫はほのぼのと主人公の周りに起こる諸々を描き出す。 いろいろとクセのある人々も見事に捌いてみせる。 夫なしの生活を当然のこととして自分の生活を築いていた妻だが、実はしっかりと夫の本質をつかんでいるのを見せるあたりはさすがだ。 好調なスタートを切ったといえるだろう。 ただ、大げさに開局10周年!と謳うような大型番組ではないだけに、もう一つこだわりがあっても良いような気がした。 第一回に関する限り、舞台は主人公の家だ。 さして大きい家ではない。 それを説明するためもあってか、この家のあちらこちらが見せられる。 これがこの番組のチープさ(制作費の少なさ)を露呈しているようにしか思えない。 いっそのこと、玄関から居間までの空間だけのワンシーンドラマにしたらどうだったか。 昔あった「ルーシーショー」や「奥様は魔女」のような設定。 その辺までの思い切りがあっても良かったように思える。 軽快なストーリー展開に、芸達者なキャストが出演するだけにそんな思いが強い。 欲をいえば、第一回は生放送で…というような思いも広がる。 それほど、心ほのぼのとさせる小品ながらもキラリと光るドラマだった。
私にとってテレビとは――
遠くにある「今」を伝えるもの
それは空間的な距離だけではなく、イマジネーションの遠く…
30年以上に亘って生きてきたテレビの世界。
今その世界に別れを告げ、客観的に視ることができるようになった。
これから先、テレビはどこに行くのだろう。どうなってゆくのだろう。
そんな意識を持ちながら、テレビの今を見つめます。
ちょうど親たちの老後を心配していた時のように。