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4~6月の番組をザッとレビュー
ドキュメンタリー篇


NHKがドキュメンタリー・教養というジャンルに特に力を傾けている印象を受ける。
追跡!A to Z」や「ワンダー×ワンダー」など番組数も増えているようだ。
それぞれ、どうだ!とばかりの取材力を駆使したものあり、CGや特殊機材を駆使した謎解きありと、良きにつけ悪しきにつけNHKらしい番組となっている。

そんな中で私が注目している番組が3つある。
その一つは木曜日の23時から放送されている「大人ドリル」だ。
これは加藤浩次と渡辺満里奈に、各回のテーマにあわせたスペシャリストであるNHKの解説委員陣が解説してゆくという番組。
こう書くととても堅苦しそうな番組思えるけれど、実はそんなことはない。
いってみれは大人のための「子供ニュース」のように、身近な大問題をとても分かりやすく解説してくれる。

何より解説委員たちの表情が「時論公論」のように、いかにも「私はNHKの解説委員ダカンネ!」となっていないのが良い。
時に解説委員同士の見解の違いがあると、しっかりやりあってくれたりして、それはそれで楽しい。
こうした空気を導き出す2人のMCの力も侮れない。
教養番組という範疇でありながら、高尚な娯楽番組を視るような気分で楽しみながら視る事ができる。
40人も解説委員をかかえているNHKならではの番組として光を放っている番組だ。

もう一つは「チェンジメーカー」という番組。
しっかりお金儲けをしながら世の中を変えていく社会起業家たちを紹介している。
貧困、環境、紛争などの問題を独自のアイデアで解決し、市場システムを利用して利潤をあげ、活動を維持、発展させていく人たちの物語だ。

私達が発展途上国への貢献ということを考える時すぐに思い浮かぶのはボランティアだったり、寄付だったりする。
それはどこか面映ゆい思いをすることも否めない。
それが本当に現地の人達のために役立っているか疑問に思うこともある。
だが、世界的な難題にビジネスという観点から立ち向かうという発想はちょっと驚き。
潔く思える。

もちろん起業家といってもビルが建つような巨万の富を狙うというわけではない。
その活動を続けるための収入の道を確保するというレベルのことだ。
こうした活動を維持し、発展させてゆくところにまで視野に入れている姿は頼もしささえ感じさせてくれる。
新たな海外協力の形を提示してくれる番組として注目している。

ただ、描き方はまだ練れているというレベルにはなく、私が視た2回で描き方やクオリティーに差があった。
願わくば、こうした活動を受け入れた現地の人達をもっとていねいに見せて欲しい。

一方、今まであった番組も充実を図っているようだ。

以前から好きで良く視ていた「世界ふれあい街歩き」。
これは、ただ世界の街を歩く番組。
カメラが主観移動するだけ。
レポーターもいない。
カメラという目の持ち主のようなナレーターの語りだけで見せてくれる。

だから、名所旧跡を訪ねたり、民放の旅番組にありがちな大騒ぎのグルメもショッピングもない。
ただひたすら街の路地を歩き、街の人々と雑談をするだけの番組だ。
旅行好きだけれど、時間を制約されるパッケージツアー嫌いの私の旅の形そのもので、タイにいた頃から楽しみにしていた。

ただ、ひとつ気になっていることがある。
当初から比べると、どうも情報量が多くなったように思うのだ。
編集点も多くなったと思う。
もっとワンカメ長まわしで、ウダウダと街を歩き回って欲しい。
“街を歩く気分”の疑似体験がテーマであるなら、出会う人がなくても良いではないか、と思う。
だって、知らぬ街に行って、それ程気軽に現地の人と触れ合えることなんてないではないか。

制作者と視聴者の架け橋テレビコというサイトにこの番組の制作者のインタビューが載っている。
そこでは「『ところでここはナニナニです。こんな名物があるんですよ』って引っ張るのは、番組の都合ですよね。だからそれだけは避けたい。」と語られている。
今、次第にこうした禁忌している傾向に引きずり込まれているように思えてならない。
ぜひ原点に戻ってもらいたいと思う。

それにしても、中嶋朋子さんのナレーションがたまらなくいいんだよな~。

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