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制作会社が直面する厳しい現実


今、番組制作会社にかつてないほどの危機が迫っている。
それはテレビの破綻にも通じかねない危険性を含んでいる。
その脅威は、実は制作会社とテレビ局との関係が生み出しているとしか考えられない。

根本的な原因はテレビ局にある。
ほとんど全てのテレビ局は、企画に関して表向き門戸を開放している。
編成局が中心となって、良い企画があればどんどん採用すると明言しているのだ。
ところが、現実は制作会社にとってそれ程恵まれたものではない。
仮に企画書を受け取ってくれたとしても、読んではくれないという。
制作局のプロデューサーにせよ、編成局にせよ、企画を受け付けるのは実績のある制作会社だけだというのだ。

だから中小の制作会社は、何とかして局のプロデューサーと人的交流を作ろうとする。
その第一歩はADの派遣だ。
私達がテレビに入った頃とは比較にならないほど人気がなくなっているAD。
そんな今でも消耗品であるということは変わらない。
1週間と持たずに辞めて行くなんていうことはさほど珍しいことではない。
常に人材不足、というより人員不足。
そこにせっせと人を供給することで、プロデューサーとの関係を構築しようというのだ。
少しでも恩を売る形になれば番組制作のチャンスが生まれるかもしれない。

ようやく制作のチャンスが生まれると、AD派遣の投資分も取り返そうと思って利潤追求を狙うから、余計品質が下がる。
ところが局の方は制作会社を出入りの業者程にも見ていない。
だから制作費は出さないくせに要求だけは山ほど出してくる。
この要求を呑まなければもう次のチャンスはないから、赤字覚悟で現場をころがすしかない。
そうしたことから倒産する制作会社が5年ほど前からどんどん増えているという。

もう一つ大きな脅威となっているのがプロダクションの制作部門や関連会社の進出だ。
吉本興業や渡辺プロ、ホリプロなど大手のプロダクションが所属する人気タレントの出演を条件にした番組を企画し、制作するのだ。
その分かりやすい例は、CXで渡辺プロが制作しているの「ウチくる!?」だ。
中山秀征はじめ、青木さやか、ビビる大木と渡辺プロのタレントが顔を連ねる。
制作力や演出力はさておき、実績のあるタレントや今ノッテいる人気者が出演するのだから、それなりのクォリティーは確保できる。
テレビ局にとってはとっても安心できる番組となるわけだ。
企画の良し悪しではないのだから、どこの局の番組を見ても同じような番組ばかりになるのも致し方ない。
タレントという武器を持たない制作会社にとって一層厳しい状況がテレビの世界を席巻することは十分予測できる。

テレビがテレビとは何かを自問する以前に、ビジネスに固執する傾向が明らかに見て取れる。
こうした環境の中で野心的な企画の番組など登場することは期待できない。
厳しい状況にあるからこそ、新たなテレビの可能性を感じさせる番組を求めたい。
しかし、そうした視聴者の気持ちはテレビ局には届きそうもない。

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