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自ら閉ざす可能性


「もうちょっと視たいと思わせるとことで終わるのが長寿の秘訣」
桂歌丸師匠がNHKのスタジオパークで日本テレビの長寿番組「笑点」について語っていた。

数年前、局側から1時間番組するか、30分番組にするかと打診されたという。
出演者たちの一致した選択は30分だった。
そして冒頭の言葉につながる。

「笑点」の出演者たちは高齢化し、人気芸人の出演も少ない。
内容もマンネリといわれてもおかしくない。
そんな「笑点」だが、長寿なだけでなく今も高視聴率を保っている。
ある意味お化け番組だ。
その理由の一端を、芸の世界に生き、客の空気を読みきった落語家たちはしっかりとつかんでいたということだろう。

それに反するのが今のスペシャル期間の長時間番組化の傾向だ。
3時間ドラマなんていうのは当たり前。
ところが、大作という謳い文句のわりに薄っぺらな内容にガッカリさせられるのが常だ。
そもそも今のテレビマンたちは、3時間を超えるドラマがテレビというメディアに適合していると思っているのだろうか。
映画でさえ3時間なんていう作品はほとんどないというのに…。
コレデモカとばかりにCMが入るのに、実質2時間以上の番組に視る側のテンションが保たれるはずもない。

一方バラエティーもまったく新鮮味がない。
4時間以上も若い人気タレントたちのワンパターンのバカ騒ぎを見せられる。
そうした、視聴者がもう辟易している演出手法をNHKを含む各局で繰り返している。
それはある意味タレントの浪費でしかない。
そうしてどこにでも顔を出すタレントたちは、歌丸師匠が言った「もうちょっと視たいと思わせるとことで終わるのが長寿の秘訣」の対極にある。
テレビは自らの可能性を放棄し、タレントを浪費してまでしてなぜスペシャルにこだわるのか。

あくまで邪推だが、昨今の春夏秋冬の期末期首スペシャル枠の長時間化の狙いは制作費の削減だろう。
そうした経営戦略によって、つまらない番組を編成するテレビ局。
それを平然と受け入れるテレビマンたちに疑問を感じるのは私だけだろうか。

今のテレビが視聴者の求めるところと相反した番組を平然と作っていることに危惧をいただいている。
テレビというメディアがそのメディアの特性を放棄しているように思えてならない。

以前私が現役だった頃、ある経営者が言った言葉がある。
「現行番組の制作費の削減はしない。でも、新番組にすれば制作費を削減したことにはならない。」
テレビ局が企業である以上、経営サイドのそうした発想は理解できなくはない。
だが、そうした経営主導の編成が、ただでさえ危機的状況にあるテレビを救うために良い効果があるとは思えない。
逆に一時期の食品業界のように、企業利益を前面に押し出したために粗悪品を売ったことと同じことをしている。

視聴者も今のスペシャル番組を歓迎しているとは思えない。
それはこの期間の番組の多くが満足できるほど視聴率を得ていないという現実が証明している。
テレビ界は大衆のテレビ離れを愁う前に、こうした放送時間に対して内容の薄い番組を見せられる視聴者の悲劇という面に目を向けるべきだと思うのだが…。

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