12月24日テレビ東京の「山口智子の 時を旅し時を奏でる」を視た。
メンデルスゾーン生誕200周年を記念した音楽紀行特別番組で、山口智子がヨーロッパ各地を訪ね、彼の波乱の生涯や数々の名曲を紹介するという番組だ。
この番組にチャンネルを合わせた理由は、15年ほど前にメンデルスゾーンをテーマにした番組を企画したことがあったからだ。
それはスピルバーグが「シンドラーのリスト」でオスカー7部門を獲得したのに合わせて企画したのだった。
音楽に限らず多くの分野で卓越した才能をもったメンデルスゾーンはユダヤ人だった。
そのためにその業績や作品も含め、正当な評価を受けることは少なかった。
「シンドラーのリスト」の波に乗って、ユダヤ人迫害の不条理や愚かさ、悲惨さを番組にしようと考えたのだった。
残念ながら、私の企画は陽の目を視ることはなかった。
そのメンデルスゾーンが生誕200年に合わせて番組になるという。
まして、その案内役としてあの山口智子さんが出演する。
大いに期待を持ってチャンネルを合わせた。
しかしその結果は惨憺たるものだった。
演出、構成、撮影、編集どれをとってもプロの作品とは思えないレベルの低さだった。
メンデルスゾーンの何を見せるのか。
メンデルスゾーンを通して何を訴えかけるのか。
その作品を名演奏で聞かせるのか。
そうした絞込みもなく、ドイツ、スイス、スコットランドを山口智子が訪れるだけの番組となっていた。
そこで辿られるメンデルスゾーンの人生や業績は散漫となり、各種のインタビューで語られる内容も希薄になっていった。
インタビューにしても字幕スーパーにするのか、吹き替えにするのかその統一性すら感じられない。
こんな番組に満足して放送しているという神経が理解できない。
撮影も番組の内容を把握しているとはとても思えない貧弱な映像しか見せていない。
まさにカメラ番の仕事そのものだった。
編集にいたっては、その役割の大切さを放棄しているかのような安直なつなぎに終始。
単に放送時間に押し込めるだけの作業しかしていなかった。
ただひたすら山口智子さんが取材ノートを手に彼の足跡を辿る。
そこには蛍光ペンでいくつもラインが引かれていていたように見えた。
そんな思い入れの強さは、クレジットで企画・取材山口智子となっていたので理解することができた。
しかし、そうした思いが邪魔になってしまうほど、何も伝わってこない番組だった。
所詮テレビ東京の作品かと思っていたら、テレビ大阪の製作だった。
思わず納得してしまった。
この番組は大和ハウスがスポンサーになっていた。
通常のスポットCMがまったく面白くない会社だ。
それが、この番組のためだろうか1分のCMを大竹しのぶさんのナレーションで制作していた。
このCMがとても詩情豊かな作品で、番組との品質の差が際立っていた。
番組がどうしようもなかっただけに、このCMを視ることができたということが収穫というだけの番組だった。
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