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オヤジが泣けるドラマ


6月26日、TBSの「Jin―仁―」が終わった。
最終回は26%の視聴率を記録したという。
最近のドラマでは驚異的な数字だ。
この視聴率の原動力となったのは、オヤジ層の支持だろう。
実際私が視るようになったきっかけは、知らぬ間に涙があふれたからだ。
涙を誘うといっても悲劇が繰り返されるわけではない。

村上もとかのマンガを原作にしたこのドラマは、現代の脳外科医・南方仁が幕末にタイムスリップして直面する出来事を描いた。
過去の人々の運命を変え、歴史を書き換える可能性に葛藤しながらも、近代医療を応用して人々を救う。
その過程で勝海舟や坂本龍馬、西郷隆盛など歴史上の人物と深くかかわって行く。
そのストーリーの荒唐無稽さと、随所に鏤められた、昔の大映テレビ室のドラマのような臭い台詞がオヤジの涙を誘った。
また、ドラマの中で繰り返される「神は乗り越えられる試練しか与えない」という台詞に、現実をオーバーラップさせたのかもしれない。
番組が狙った、「生きる」という意味の本質、懸命に生きる事の大切さ、人が人を想う気持ちの美しさ、そして人の笑顔の輝きが、素直に視聴者に伝わった証しといえるだろう。

ところで、私がこのドラマにひきつけられたのはもう一つ理由がある。
それは橘咲を演じた綾瀬はるかの魅力だ。

日本の美人女優を語る上で「お姫様女優」というくくりがあった。
東映の時代劇が全盛期だった頃のことだ。
佐久間良子、三田佳子などを輩出した。
ただ美しいというだけでなく、町娘にはない気品と芯の強さを漂わせていることが必須条件だった。
時代劇が衰退し、最後のお姫様女優といわれた藤純子(富司純子)が緋牡丹お竜となって、この譜系は途絶えていた。
その後大奥物などの映画もあったが、「お姫様女優」といえるほど存在感を示した人はいなかった。

「Jin―仁―」の中で、綾瀬はるかはその復活を感じさせてくれた。
「天然」ともいわれる本人のキャラクターもあるのだろうが、おっとりした面としっかり者の面を併せ持った武家の娘を見事に演じていた。
その魅力は中谷美紀や、麻生祐未など卓越した演技力を持った女優たちの中でも煌いていた。
今は時代劇が制作されることは難しいが、もっと彼女のお姫様姿を見たいと感じた。

とはいえ、このドラマも完結。
これからも、オヤジが家族に隠れて視ながら涙することができるドラマ。
そして綾瀬はるかがお姫様として今回以上に魅力を発散してくれる作品を期待したい。
それまで「おさらばえー」。

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