「 SONGSスペシャル「松任谷由実 part1」」がNHKで放送された。
2週連続の1回目だ。
今回は、ヒット曲や代表曲を網羅したというより、一般の若者からの要望に応えたドキュメントが中心となって構成されていた。
ユーミンは偶然にも私と同い年で、同じ八王子出身。
母は、彼女の実家の呉服店とも付き合いがあった。
そんなせいだろうか、彼女が鮮烈にデビューした時、妙にライバルのような意識でそのヒットを見つめていた。
その後、彼女はそのもてる才能を発揮して音楽界の新たなページを創りだし、不動の地位を築き上げた。
私の見る目はライバル視からジェラシーへと変わっていった。
だから、彼女の活躍をあえて見ないようにしていたところもあった。
テレビ番組に出演しないというのも好都合とさえ思っていた。
まったく、私の一方的な思いからだ。
今回の「SONGS」で見せてくれたユーミンの素顔は、それまでの私の松任谷由実感を一変させた。
長崎の高校生から寄せられた投書に応えて作った愛唱歌が石碑になって、その除幕式で垣間見せた涙。
蓼科の中学生の卒業式に来賓として招かれ、母親のような優しい眼差しで見つめていたその表情。
そしてそれぞれの場で述べた祝辞の飾らない、そして「人を想う」心をこめた言葉は、これまでの私の勝手な誤解を瓦解させた。
ふとした出会いから始まった蓼科の中学生達と『卒業写真』を合唱したときの彼女の真剣さは心を打つものだった。
全員でユーミンの弾くピアノにあわせて合唱したのだが、そのとき彼女はとても暖かく、そして真剣に中学生の指揮者を見つめながら演奏した。
その目は単に番組が仕組んだ演出ではありえない、ぬくもりがあふれていた。
一つの時代を築き、もはや揺らぐことのない地位にあるユーミンの心の平安がそこに感じられた。
そのとき、音楽番組である「SONGS」はドキュメンタリーとしての存在感を持って私達に迫ってきた。
そんなユーミンが、深夜、フジテレビの音楽プロモーションの番組に出演していた。
その中で、最近発表した楽曲のダウンロード数がすごいけれど、CDは一向に売れないと嘆いていた。
あー、あのユーミンでさえプロモーション番組にでて、PRに努めなければならない時代かと、ちょっと寂しさを感じてしまった。
ただ、売れないという事実を平然と語る彼女に、若かりし頃のパイオニア的なギラギラした輝きとは別の、美しさを感じられたのが救いだった。
今週「SONGS」の第2回目が放送される。
楽しみにしたい。
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