新年のスペシャル番組シーズンも終盤に入り、新番組のラインアップも見えてきた。
そうなるとゴールデン枠の番組PRが喧しくなる。
毎回の改編期の恒例とはいえ、テレビマンの見識が疑われる時期がやってきている。
以前トーク番組(コーナー)の出演者は番組や映画のPRのためにやってくるということを書いた。
それが昨今はこのPRが一層エスカレートしていて、ニュースでもPRのために時間を割いたりしている。
いつもはない「注目の人」なんていうコーナーを作り、内容は番宣だ。
こうした傾向はNHKで特に顕著で、ドギツサさえ感じる。
年末からは大河ドラマ「龍馬伝」だらけの印象だ。
1月2日の「プロフェッショナル」で坂本龍馬をとりあげていたのには呆れた。
福山正治まで登場するのでは、その魂胆は番宣以外にない。
以前、NHKで「ドライビング・ミス・デイジー」という芝居に出演する仲代達也さんの日常を見つめた番組があった。
それは年齢と共に台詞覚えが悪くなった老俳優が役作りに取り組む生の姿があった。
年老いた名俳優の苦闘と葛藤が描き出された秀作だった。
それと、この回の「プロフェッショナル」を同列にして評価するわけにはいかない。
また、1月7日には「あなたが主役 50ボイス」という番組では「『龍馬伝』のスタッフがこだわっていること」というテーマで番組を作っていた。
いつもは2つの質問で構成されているのに、この日は1テーマ。
30分まるまる龍馬伝のPRに徹した。
なりふり構わぬこの姿勢、厚顔無恥の謗りを受けても仕方がないだろう。
こうした番組が、電波の無駄遣いだという意識はないのだろうか。
「公共放送としての使命」。
何かというとNHKから発せられるこのお題目はどこにいってしまったのだろう。
私が「11PM」のADだった頃。
30年以上も前のことだが、その頃他の番組担当者や広報部が何とかPRさせてくれといってきたことがあった。
「1分でも30秒でもいいからお願いします」というのが彼らの口から出る言葉だった。
担当者は「生だから保証はできないよ」という条件付でシブシブOKしたものだった。
当然この言葉どおり、番組が押してくればカット候補の1番手となる。
番組の出演者を出すから、ということでPRを依頼してくるケースも稀にあった。
そんなときでも、せめて1分か2分というのが通常だった。
もちろん「生だから…」という条件がつく。
あるとき、松田優作が映画のPRのために出演することになっていたが、番組が押したために飛ばしたことがあった。
松田優作やその取り巻きはたいへんご立腹だったそうだが、担当ディレクターはまったく気にした風もなかった。
「この番組の視聴者が見たいのは松田優作じゃない」といったことを覚えている。
こんなエピソードが、今や過去への郷愁でしかないことは理解している。
だが、番組を預かるものの意気というのはあってよいはずだ。
数千人に一人という難関を乗り越えてテレビという世界に入ってきたクリエーターとして、その程度のプライドは持っていて欲しいと思うのは私だけだろうか。
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