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スタッフの地団駄が聞こえるようだ


映画「アマルフィ 女神の報酬」の続編、「外交官 黒田康作」が終わった。
全体的にとても高いレベルにあった作品だと思う。

終わってから整理してみると、さほど斬新なストーリーというわけではない。
しかし、数々の事件の勃発。
秘密めいて絡み合う登場人物。
巧みに緩急をつけた脚本。
緊迫感を描き出していた映像。
そして解き明かされてゆく問題の核心。
これらがうまく構成されて謎解きのおもしろさと、ストーリーの奥深さを作り出していた。
何より、CXにありがちなカット割ではなく、安定した画作りだったのが質の高いドラマに仕立てるのに効果的だった。

出演者たちも概ね好演。
ある意味、日本のジェームスボンドとして織田裕二はその演技力に磨きをかけ、新たな境地を創出していた。
「踊る大捜査線」の熱血漢とは異なり、実年齢43歳という年輪を重ねた男の魅力を発散していた。
ひょっとすると大減量したのではないか。
そう思わせるほど深い陰影を刻んだ表情。
そこからは、この役にかける彼の意気込みが伝わってきた。

黒田とコンビを組む大垣利香子を演じた柴咲コウも好感が持てた。
キツい感じの顔をカバーするダサ目のめがね。
いつも腕にかけている、とても活動的とは思えない大きなバッグ。
ドジで、相手に翻弄される刑事役は「ガリレオ」の内海薫に通じる。

個人的には、萩原聖人が陰のある誠実さを表現していたことを高く評価したい。

ところが、この作品にもアキレス腱があった。
外務副大臣を演じた草刈民代だ。
素人顔負けの平板な台詞まわしや浮ついた視線は、とても日本アカデミー賞を受賞したとは思えない。
代議士なら当然持っているであろう思惑や、野心、策謀といったものが、かけらほども伝わってこない。

例えば、先週「相棒 Season9」の最終回で、暗躍する女性代議士片山雛子を木村佳乃が演じていた。
彼女はその美貌を武器に、策謀をめぐらす「したたかさ」を醸し出していた。
その何分の一かでも、草刈に出して欲しかった。
最終回の演説のシーンではもう目を覆うばかりの表現力の拙さだった。

プロデューサーも監督も彼女の演技に唖然としたに違いない。
重要で、そして難しい役なだけに、もっと安心して任せられる女優を選ぶべきだったと後悔したかもしれない。

大山も蟻穴から崩れるのたとえ通り、ほんの些細なことが作品全体をダメにしてしまうケースは山ほどある。
この作品では、彼女の演技がドラマ全体の評価に悪影響を与えるであろうことを疑う余地はない。

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