このところNHKのドキュメンタリーに新しいムーブメントが感じられる。
中でも最も感銘を受けたのが、昨年11月30日のNHKスペシャルで放送された「雨の物語~大台ケ原 日本一の大雨を撮る~」だ。
日本一大雨が降る大台ケ原は年間5000ミリを記録するという。
一日で東京の一年分の雨が降ることもあるというから驚きだ。
そこにウルトラハイスピードカメラを持ち込み、落ちてくる雨の滴を捉えた。
そして雨の発生の瞬間を、気象観測用の飛行機にカメラを積んで映像化した。
普段私たちが目にすることのできない雨の姿かたちのドラマティックでさえある映像は、目を惹き付けて離さない強い力を持っていた。
その想像を絶するほど大量の雨がもたらす自然の営み。
雨を利用して生きるカエルやキノコの生態は、微笑ましくもあり、そして力強くもあった。
そこに暮らすほんの少数の人たちは大雨という自然の驚異と向き合いながら生活していた。
それは、自然に対する畏敬の念というよりはやさしく共存しているといった方がよいかもしれない。
危機に瀕している自然との正しい付き合い方を私たちに示してくれているようだった。
以前ここで批判した「エコ大紀行」なんていう下種な自然保護、環境保護を訴える番組とは比較にならない程の説得力を持って私たちの前に表してくれた。
大台ケ原には今も自然の大きな息吹が一つの世界を保っていたことに安堵と喜びさえ感じさせてくれた。
また、美しい地上の映像も見逃せない。
冬。
厳しい寒さと雨がもたらす「雨氷」。
扁平になりながら落ちてくる雨の滴。
そのクローズアップに対して見せられる大ロングの映像の対比は自然そのものが作り出すドラマを感じさせてくれた。
これらは映像詩としての力さえ持って、視るものに自然の美しさを強く印象付けるものだった。
この番組は自然の豊かさへの賛歌であり、自然を守ることの大切さを今までのどの番組よりも饒舌に私たちに教えてくれた。
大絶賛と共に、再放送を願って止まない秀逸な傑作だと思う。
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