ここ数年、とても可能性を持った役者さんの充実ぶりが気になっている。
宮﨑あおい、瑛太をはじめ、上野樹里、石原さとみ、田畑智子、本仮屋ユイカ、黒木メイサ、志田未来、成宮寛貴、水嶋ヒロ、二宮和也など枚挙に暇がない。
若い芽が次々とその素質を開花させていっている。
これから作品に恵まれればもっともっと大きく開花するに違いない。
本当に楽しみだ。
ただ、今注目しているのは30代後半から40代の女優達だ。
中でも、麻生祐未さんの活躍に心が惹かれている。
元々、カネボウのキャンペーンガールで世に出て、それからは美しさだけで(といっては失礼だが)数々のドラマに出演していた。
それが、2001年NHKの連続テレビ小説「ほんまもん」で池脇千鶴と競演したあたりから転機が訪れたのではないか。
このドラマでは、日本料理店のしっかり者だがどこか“天然”の年増女中を演じていた。
あの美しさが売り物の女優がメガネをかけ、コミカルなキャラクターに挑戦していた。
昨年末から着物の着付け教室のCMで「特別じゃない日なんてないのよ」と妖しげな空気を孕みつつ少年に諭す演技はこうした流れの結実したものといえる。
それが、今年になって一層輝きを持った演技を見せてくれるようになっている。
それはシリアスな役割で光を放った作品だ。
テレビ朝日の「警官の血」で、内縁の夫の暴力に虐げられながらも、その男から離れられない女性。
ここでは精神的に傷を負い暴力を振るう主人公の妻(貫地谷しほり)と対比する意味があり、見事にその役割を果たしていた。
一度も表現などされていないけれど、その女性と夫の過去の生活や、女性の性のようなものさえ感じさせる名演だった。
何しろ殴られて吹っ飛んでゆくときの迫力。
ほんの数シーンだけの出演だったが、貫地谷との経験の差を見せ付けていた。
そして、先日放送されたフジテレビの「VOICE」では、末期がんの夫の死の原因が医療ミスではないかと疑う妻を演じた。
圧巻は、結局医療ミスではなく、実は尊厳死を望んだ夫と院長の友情によることが解き明かされた場面。
彼女の嗚咽にはそうした死を望んだ夫への愛情と、友情を全うした院長への感謝の気持ちまで凝縮されていた。
美形女優から見事に演技派女優へとステップアップしていることが伝わってくる。
それはちょうど、ハリウッドでミシェル・ファイファーのポジションに良く似ている。
これから先、ドラマや映画において重要な地位を築き上げるに違いないと思う。
その他にも、この年代の美形女優たちの中で羽田美智子さんと稲森いづみさんに注目している。
この3人に共通するのは非の打ち所がないほどの美しさを持ちながら、コミカルな役柄に挑戦して、演技の幅を広げているところにある。
コミカルな芝居は台詞の“間”が大切で、それ次第で笑えるものも笑えなくなる。
表情や仕草、目線の送り方などちょっとした動きも要求される。
そうした細々とした演技を身につけることで、役者の深みが増し幅も広がるものだ。
いくら美形でもそのまま終生ヒロインを演じきれるわけでもない。
また、美形だから相当自分を壊した演技をしても見苦しくはならない。
これから先の美形女優の方々にもぜひ早いうちにコミカルな演技に挑戦して欲しいものだ。
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