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心休まるKFCのCM


「♪ママの手作りもいいけど~ ケンタッキーの手作りもおいしいよ~」
昼の時間帯に流れているケンタッキーフライドチキンのCMだ。
ちょっとおかあさんのお料理の腕前を立てつつ、KFCのおいしさを訴える。
その謙虚さが気に入っている。

映像は、お買い物帰りのママがKFCの匂いに引かれたのだろう、ふと店を覗く。
どちらかといえばインパクトの弱い部類に属するものだ。
ただママ役の女性の何気ないしぐさなど、細部の演出に作り手のセンスのよさが感じられる。
さすがCMを作り慣れている企業の作品だと納得させられる。

昨年の食品偽装騒動以来、キッチン用品の売れ行きが好調だそうだ。
外食を避けて、安全な食品を使って自宅で食事をする人が増えているため、と分析されているらしい。
それに追い討ちをかけるようにこの不況だ。
外食産業には厳しい時代が続くことが予想される。
そんな切羽詰った状況で作られたとは思えないような、ほのぼのとした空気感のCMはとても好感がもてる。

ところで、こんな時代になるとテレビのCMにも変化が起こる。
バブルが弾けたころだったか、サラ金のCMが民放各局にも広まった。
それまではサラ金のCMが流れるのはテレビ東京くらいだったはずだ。
それが、バブルが弾けて収入減が目前に迫ると、どの局も独自のCM規定を改めてまでして、そうした企業のCMを流すようになった。

今回の不況でも既に影響がでている。
サブプライムローンの破綻が叫ばれ、いくつもの大手企業が危機感を募らせ始めてから目立ってきたCMがある。
パチンコの新機種のCMだ。
ギャンブルの一翼を担う、パチンコ機器の会社が新作を次々とPRしている。
金のあるところには必ず擦り寄ってゆく広告代理店のしたたかさと、テレビ各局のスポット営業の悪化が同調したのだろう。
それまでの大手企業からの出稿料が減った間隙を縫って、その露出量は大躍進を続けている。

こうした傾向は、テレビがどんどん堕落してゆく兆候のように思えてならない。
このままで行くと各局のCMの倫理規定などどこへやら。
いつか風俗やソープランドなどの業界にも手を出すようになるかもしれない。

テレビが高尚なものだなどとはいうつもりは毛頭ないが、守るべき一線はあると思う。
それは外から持ち込まれる素材であったとしても越えてはならないもののはずだ。
民放も一つの企業である以上、利潤追求をするのは当然だ。
でも、KFCのような奥ゆかしさというのはしっかりと守っていてもらいたいと思うのだが。

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