スキップしてメイン コンテンツに移動

“開かれたNHK”を気取る愚挙

3月21日NHKの「日本の、これから 放送記念日特集「テレビの、これから」-第1部-」を視た。

民放連の会長や、NHKの副会長、嶌信彦氏、糸井重里氏などが顔を連ねていた。
それに現在テレビ番組を制作している各局のプロデューサー、放送作家もパネリストとして出演していた。
こうした人達が市民と《徹底討論》するという謳い文句の番組だ。
番組の中では、スタジオに参加している視聴者代表(どうやって選ばれたのかは分からない)の発言や、メールなどで送られてきた意見について討論が行われた。

こんな形でテレビの現在を見つめ、将来像を模索すると胸を張るNHKの姿勢にまず呆れてものがいえない。
テレビ局、中でも番組制作者は視聴者の意見を取り入れて番組作りなどするか?
また、そんなことで面白い番組が作れるか?

考えてほしい。
WBCの日本代表チームを原監督は一般市民の声を基につくっただろうか。
サッカーの日本代表だって同じことがいえる。
世界一を目指すにあたり、監督が目指すチーム像があって、それを実現できる人を選んだはずだ。
そこに一般市民の声など入る余地はない。

テレビもそれと同じことがいえる。
テレビ局には、厳しい就職戦線の中からテレビ番組制作に向いた人を厳選している。
そうした選りすぐりの人達が、日夜番組つくりの現場でどうしたら面白くなるかを考え続け、研鑽しているはずだ。
いわば番組つくりのプロの集団だ。
だからそこに市民の批判の声など介入させる必要はない。

それよりも、テレビ局がやるべきことは、もっと徹底的に自分達の今作っている番組を検証することではないか。
あの吉田直哉が演出した「源義経」とタッキーの「源義経」を徹底比較し、局内で議論を戦わせ、検証するべきだろう。
その方がずっとテレビの質は高くなるはずだ。

また、視聴者からの意見に、どの面下げてそうした発言ができるのか?というように理解に苦しむものが多かった。
例えば、「視聴率に縛られた番組つくりがテレビ番組をつまらなくしている」なんていう声があった。
一度もテレビ局の実情を見たこともなく、番組つくりを経験したこともない人がどうしてこんなことがいえるのだろう???

また野球を例に取るが、北京オリンピックで日本チームがメダルが取れなかったとき。
何人かのパネリストと呼ばれる人達が星野采配を批判した。
「あそこはバントでランナーを送るべきだった」なんてエラッソーにいっていた。
全く野球の経験もない人が、何十年も野球の世界に生きて偉大な実績を残した人にどうしてこんなことがいえるのだろう。
それよりは観客の応援についてとか、日本の野球界の今後の発展や強化についてのアイデアを提案した方が、ずっと彼らのポジションに合致しているはずなのに。
この番組で発せられた市民の声の多くはこれと同様のものだった。

視聴者がテレビに対する疑問や要望、番組の内容についての意見なり感想をこうした場でぶつけるのなら理解はできる。
それは逆に以前よりもっと積極的にするべきだとも思う。
そうした中から新しい番組のアイデアの一端が見つかるかもしれないし、番組内容の充実にもつながるかもしれない。

しかし、テレビの世界の一端すら覗いたこともない似非批評家を気取る一般視聴者のテレビ批判には中身がない。
「私達はこういう番組が見たい!」という声がもっとあって欲しいと思った。
視聴者は批評家になどなる必要はない。
それよりは、「おもしろい」「おもしろくない」、「見たい」「見たくない」をストレートにテレビに対してぶつけるべきだ。
それがテレビを突き動かす原動力となることを忘れてはならないとあらためて感じさせられた。

確かに、的を得た視聴者からの声も中にはあった。
「NHKはバラエティー番組の制作をやめろ」という視聴者の声だ。
これに対して今井NHK副会長が「東京カワイイTV」はとても面白いと反論していた。
う~ん、あの番組を面白いという感性だから「バラエティー番組の制作をやめろ」といわれているのではないのでしょうか。

これを投書した人はNHKを批判したのだと思うが、あえて私はNHKに対する要望と受け止めた。
バラエティー番組をやめた分、そこにどんな番組を編成するのか。
NHKの一つの方向性を示唆して欲しいと感じた。

コメント

このブログの人気の投稿

そろそろ勇者の出番では?

テレビ朝日の長寿番組「 徹子の部屋 」。 いったいいつまで続くのでしょう。 スタートしてからもうすぐ33年にもなろうとしているのだそうです。 司会の黒柳徹子さんは、日本のテレビ史を語る上で欠くことのできない人だ。 テレビの創成期から活躍され、この番組以外でも多くのテレビ史に残る番組にも出演された。 今も語り継がれるTBSの「ザ・ベストテン」や今もユニークな発想で高正解率を誇る「世界不思議発見」などユニークな企画を一層際立たせる実績を作った。 この他にも局をまたいで大きな貢献をされたことは、長く語り継がれるべき偉業だ。 ただ、ここ数年「徹子の部屋」の衰えぶりは目を覆うほど、過去のきらめきを失っている。 その大きな要因は、残念ながら徹子さんのお年だろう。 もう75歳、四分の三世紀も生きていることになる。 特色のひとつであるあの早口は、入れ歯のせいか、滑舌を云々できるほどのレベルではなく、もはや聞きづらい。 加えて、ネタ帳から次の話題を探しているのだろう、「あの、ほんとに」が連発される。 そして最も衰えを感じざるを得ないのは、ゲストの話を聞かないこと。 時には話をぶった切ることも珍しくはない。 細かいことをいうと、CM前に「それではここでコマーシャル」を何度繰り返しいうことか。 これだけの時間があれば、もう1ネタくらいゲストの話が聞けるのに…と思うほどだ。 確かに、固定視聴者の多くは徹子さんを視に来ている人も少なくないかもしれないが、やはりゲストの話の方が重要でしょう。 番組の舞台裏ではゲストへの徹子さんの心遣いは細部まで考えられているという。 あのタマネギ頭も、毎日徹子さんのヘアスタイルが変わると、視聴者の目が徹子さんに行ってしまって、ゲストがないがしろになるということから考えられたそうだ。 Wikipediaの「 徹子の部屋 」の項目にそれらのことが記されている。 それほどまで考えられていた「おもてなしの心」が、今は形骸化しつつある。 それは、きっとこの番組にかかわる誰もがもう何年も前から感じていることなはずだ。 制作担当者だからこそ強く感じていたはずだ。 ならば、誰かそろそろ勇気を出して、降板(番組終了)という鈴をつけても良い時期ではないか。 この時間、NHKでは「 スタジオパークでこんにちは 」というトーク番組が編成されている。 そこでは武内陶子さんが、NHKのア

篤姫が終わってしまった

NHKの大河ドラマ「篤姫」が最終回の放送を終えた。 1時間15分の延長バージョンとしては駆け足で、明治維新の15年間を生きた篤姫の晩年を描いていた。 佐藤峰世演出はそれでも、十分に視聴者に気持ち良く泣くことができるよう計算されたものだった。 本当は、大奥を出てからの天璋院はかつて仕えた女中たちの生活のために骨身を惜しまずに奔走したという。 死を迎えたときには、当時の金で3円程度しか手元に残っていなかったそうだ。 その辺りのところももう少し見たい感じもしたが、それは大河ドラマとしては難しかったのだろうか。 ドラマでは、あくまでやさしく送り出すところが描かれたのみだったのはちょっと残念だった。 「篤姫」はここ数年視聴率的に凋落する大河ドラマで驚異的な数字を記録した。 ついにはNHKが全日視聴率でTopになる原動力ともなった。 幕末を描いた作品は、あの三谷幸喜脚本で香取慎吾を起用した「新選組」でさえ視聴率的には苦戦していたという。 それは、やるせないほど殺伐とした時代が見る人に救いがなかったからに違いない。 ところが今回は女性層の支持を受けて、誰も想像できなかった程の数字を記録してしまったのである。 今回はその成功の源となったところを制作者としての立場から分析してみよう。 まず、第一に「篤姫」成功の根底には、篤姫の人生を分かりやすく線を引いていったところを見流すわけには行かない。 例えば、「篤姫」の1年間は篤姫の成長と共に、笑い、叫び、泣きという言葉で区切ることができる。 島津本家に養女に出るまでの於一時代の笑い期。 養女となってから家定が薨去するまで、篤姫の時代の叫び期。 そして天璋院となってからの泣き期だ。 そして、そのそれぞれの時代に篤姫に強くかかわり、影響を与えた人たちを作った。 それは佐々木すみ江さん演じる菊本であったり、松坂慶子さん演じる幾島であったり、北大路欣也さんの勝海舟であった。 こうした人たちとのかかわりの中で、成長し、変わってゆく篤姫を分かりやすく見せたところは見逃すことができない。 その存在感の大きさは、1年間「篤姫」を支えた瑛太の小松帯刀や西郷吉之助(小澤征悦)、大久保正助(原田泰造)に匹敵するほど大きなものだった。 もう一つ特筆しなければならないのはキャスティングの妙だ。 前作、「風林火山」は山本勘助役の内野聖陽はじめ、武田信玄の市川亀治郎など

武内陶子さんが降板した!

NHK「 スタジオパークからこんにちは 」のキャスター、武内陶子アナウンサーが12月で産休に入った。 サイトでは降板となっている。 現在この番組は岩槻里子・山本志保・住吉美紀の3名のアナウンサーが交代で司会を務めている。 「スタジオパーク…」は月曜日から金曜日まで毎回NHKの番組の宣伝を兼ねたゲストとのトーク番組だ。 タイに住んでいたころはこの番組しか視るものがなく、ほとんど毎日視ていた。 どこかピントが外れた質問が飛び出した渡邊(黒田)あゆみアナウンサー。 端々から「ワタシ、本当はこんな番組やりたくないんだから」という匂いがプンプンしていた有働由美子アナウンサー。 彼女達の司会ぶりに一人文句を言いながら視ていたものだ。 それが、2007年夏に武内陶子さんに代わって、喝采を持って迎えた。 私は武内アナを、テレビマンとしても視聴者としても好きだ。 女性版徳光和夫だとさえ思っている。 アナウンサーとしての技術~声の表情や表現力、滑舌のよさに加えて、ゲストを和ませる話術。 ゲストについての勉強もしっかりされていることが随所に感じられた。 そして、NHKのアナウンサーらしくない当意即妙の言葉選びで、画面を暖かな雰囲気にするのも好感を持って視ていた。 あるとき、男性ゲストが奥さんに寛容なことを話したとき、「今奥様たちのポイントがアップしましたよ」といってゲストと会場の笑いを誘った。 見事なリアクションだと思った。 普通のNHKのアナウンサーから出る言葉ではなかったろう。 民放も含めた歴史上の女性アナウンサーの中で、文句なくBEST1の称号を送りたいと思っている。 さて、そのピンチヒッターとして登場してきた3名のキャスターたちである。 いずれ劣らぬ才媛で、経験豊富なアナウンサーたちだが、これがどうもいただけない。 NHKの悪いところを全部背負って立っているかのような不出来ぶりだ。 ゲストに対して事前準備や勉強をしていないことが見え見えの薄っぺらさが気になる。 それでいて、台本通りの進行に固執するからトークが弾まない。 何よりゲストに対して興味を持っている=面白がっているとは思えない。 質問にも「いかがでしたか?」が連発されるのも気になる。 この言葉からは短い言葉しか期待できない。 だからトークが膨らまないし、ゲストの人となりが出てこない。 日本テレビの多昌アナウンサーは、野球の