スキップしてメイン コンテンツに移動

いつまで続く「篤姫」の遺産


NHKの大河ドラマ「天地人」の視聴率が好調のようだ。
妻夫木聡さんの爽やかな演技が好感を持って受け入れられているのだろう。
いくら歴史ブームとはいえ、樋口(直江)兼続という一般的な知名度がない人を描いているのにしては予想外の好成績といえるのではないか。

ただこの高視聴率、どうしてもあの「篤姫」の影響のように思えてならない。
というのも、冒頭に書いたように妻夫木聡さんの爽やかさ以外に、好評の要因が見当たらないからだ。

例えば出演者たちの顔ぶれをみても、例年のように演技派といわれるような名脇役が名を連ねているわけではない。
だからシーンごとに閉まった感じがしない。
台詞もなく、ただいるだけの俳優がどれだけいることか。
そうした場面でも良い役者はしっかりと空気を作ってくれるのだが…。

唯一、これまで目を惹かれたのは玉山鉄二さんと長澤まさみさんくらいか。
相武紗季さんの美しさはオヤジとしては嬉しいところではある。
ついでにいえば、常盤貴子さんが18~19歳を演じているのは視る側に苦痛で、作品では主人公の年齢を不明確にしている以外にない。

脚本も、随所に時代性を取り違えたような部分が気になる。
また、言葉使いも取って付けたようで聞きづらい。
頻繁に使われる「義」という言葉を定義づけるような説明臭さは特に気になる。
もっと女性脚本家らしさが前面に出てもよいのではないか。
それと、兼続がでしゃばるシーンも鼻につく。
もう少し工夫があっても良いのではないか。

そして、なんといっても演出だ。
CGを多用している映像は、その処理が主張しすぎていて違和感を覚える。
加えて、最近随所に舞台演出的な手法をとっているが、これがまったく効果的でない。
美術セットを廃して、サス照明だけで見せるのだが、これが幻想シーンなのか現実なのか不明瞭。
カット割にしても、イマジネーションラインを分かりにくくする映像が多いし、アップの多用も閉塞感しか伝わってこない。
だから位置関係が分からなくなることもしばしばだ。
ロケーションでは美しい映像を見せてくれているのだから、もっと引き画を見せてくれても良いと思う。

スタートしてから2ヶ月足らず。
まだ、主人公は16歳だ。
今月中には上杉謙信が死んで、新たな展開となるはず。
そうなってからに期待したいところだ。

ただ作品として良くなるのかどうか、そしてそこまで視聴率が保てるかどうか。
妻夫木聡の実年齢を役が追い越したとき、今のような爽やかさだけでは視聴者を惹き付けておくのは難しいだろう。
それは多分4月からGW頃になることだろう。
ちょうど番組が中弛みになる時期にも当たる。
そこで視聴者を離さないのは演出と脚本だと思うのだが、大丈夫だろうかと他人事ながら心配になってしまう。
これからもう少し我慢しながらお付き合いしてゆくことにしよう。

コメント

このブログの人気の投稿

笑われるタレントの時代がまたやってきた

「 クイズ・ヘキサゴンⅡ 」が絶好調のようだ。 それは視聴率の面からだけでなく、番組の勢いという面、制作サイドと出演者の疎通という面なども含めてのことだ。 それは島田紳助さんがヘキサゴンファミリーと、主なレギュラー出演者たちを呼ぶなどからしても、よい空気感が伝わってくる。 少なくとも今のところは出演者それぞれが存在感を得ている。 その正月特番で、この番組から誕生した羞恥心が音楽活動を休止することになった。 真に2008年を疾風のごとく日本中を席巻し、1年足らずの間で音楽界に一つの足跡を残す活動をしたといえるだろう。 番組が生んだ副産物とはいえ、その勢いはたいしたものだった。 この番組が生み出した『オバカタレント』は芸能界に新たな1ジャンルを築いたことも見逃せない。 今までクイズ番組といえばANBの「 クイズ雑学王 」のように正解率の高いに人にスポットライトが当たるものだった。 しかし、ヘキサゴンではタレントたちの無知さを笑いの種とすることでオリジナリティーを勝ち得ている。 ただ、羞恥心をはじめPaboのメンバーたち、残念ながらオバカのほかにこれといったキャラクターがないようで、他の番組に出てもまったくおもしろくない。 紅白歌合戦でも四文字熟語などいわされていたが、会場から笑いを誘うことはなかった。 やはり島田紳助さんの父親の愛すら感じさせつつの突込みがあってこそ生かされているということだろう。 そんなブームに肖ろうというのだろうか、日本テレビが1月3日に「 おとなの学力検定スペシャル 小学校教科書クイズ!! 」なる番組を放送していたが、これが惨憺たるでき。 単なるパクリで、局の姿勢を疑いたくなるような番組だった。 ヘキサゴンファミリーのメンバーも出演していたが、まったく持ち味が生かされていなかった。 こんな番組を作っていたら、日本テレビはこの先もジリ貧状態が続くに違いない。 ところで、ヘキサゴンファミリーを見ていて思い出すことがある。 だいぶ昔、業界では大御所といわれていた先輩から教えられた。 それは、文化や流行はおよそ18年毎に繰り返すということだ。 そんな面から考えると、確かにオバカタレントといわれる人たちが人気を獲得しているのも理解できる。 彼らはけして視聴者を笑わせているのではなく、笑われるタレントだ。 18年前を振り返ると、確かに同じようなタレントが登場し...

心地よい緊迫感の俊足ドラマ

CXの「 絶対零度~特殊犯罪潜入捜査~ 」が面白い。 昨年の「 絶対零度~未解決事件特命捜査~ 」のSeason2だ。 前シリーズは若くてドジな刑事桜木泉(上戸彩)の成長日記のようなストーリーだった。 ある意味上戸彩の魅力がメインになった、ありきたりなドラマだった。 ところが、リニューアルされ、任務も変わって番組自体の空気も一変した。 今シリーズは一言でいえばスパイ映画。 変装、潜入、嘘、盗聴などあらゆる手段で容疑者に接近し、情報を集め、事件解決につなげる。 そんな中で、主人公泉の葛藤が横軸に流れる。 番組全体を緊迫感が包み、駆け足で進むようなテンポはあるとき視聴者を置き去りにしてゆくようだ。 何より、尾行シーンの演出が秀逸だ。 昔、「太陽に吠えろ」では捜査員たちがチームワークで次々とリレーしながら犯人を尾行した。 それと匹敵するような緊張した尾行を随所に見せてくれる。 「24 -TWENTY FOUR-」以来流行している映像処理も上手く取り入れ、緊張感を作り出している。 ただ欲をいえば、スタッフが乗り込む偽装トラックの装備がちょっとチャチ。 「エネミー・オブ・アメリカ」程ではなくとも、ハイテク感は出して欲しい。 それと他の刑事ドラマにあるような説明的な部分がまったくないために、ちょっと目を離すと展開が見えなくなる。 ここに何か工夫があっても良いと感じた。 出演者の顔ぶれを見れば、テレビ朝日の「 ジウ~警視庁特殊犯捜査係~ 」にも期待したい。 黒木メイサと多部未華子という、これからのドラマ界で重要な意味を持つであろう二人の競演には興味を惹かれる。 初回を見る限り、期待を裏切られることはなさそうだ。 来週以降を楽しみにしたい。 しかし、「特殊犯罪捜査対策室」といい、「特殊犯捜査係(SIT)」といい、特殊な世界で活躍する刑事ドラマが主流になってきた。 それを否定する気はないが、できることなら王道の捜査一課が活躍するストーリーというのも見たい。 秋の編成に期待しよう。

我が家の大事件!大丈夫か?!テレビ

久々のブログ更新だ。  年齢を重ねて、ブログというのが億劫になったこともある。 だが、それ以上に、ここで取り上げたいような番組に出会わなかったのが最大の理由。 それは当然と言えば当然で、ここ数年、スポーツ中継とごく一部のドキュメンタリー以外の番組はほとんど視ていない。 スポーツ中継が下手になったということを書いてしまったし、 ぜひ見たいと思う番組は一週間で5本もない状態では、書くネタがないのも致し方ない。 今日、2014年の大晦日。 我が家で考えられないことが起こった。 なんと まだ一度もテレビのスイッチが入っていない。 実際には30日の夜からだから、優に24時間以上テレビが写っていないことになっている。 今日はもうテレビをつけたくなるような番組がないから、このままおやすみなさいとなるに違いない。 我が家では、どんな時でも、テレビがついているのは当たり前。 どんなにつまらない番組ばかりとしても、テレビは点いていたのだ。 音は生活ノイズと化し、画面は眼に映る景色の一部のように、私が家にいる間はスイッチはONになっていた。 それがついに究極の事態に陥ってしまった。 見たい番組がない。 地上波はもちろん、BSでも…。 こんな日が来るとは思ってもいなかった。 私にとって、テレビが死んだ日になった。 これは大ショックなことだ。 なぜこんなことになったのだろう。 番組が面白くない、見たいと思わない、レベルが低い…。 その責任は誰にあるのだろう。 そこのところを、この正月休みにじっくりと考えてみよう。 次回のブログのテーマとなるかも知れない。 ともあれ、明日元旦は実業団駅伝。 2日と3日は箱根駅伝があるから、我が家のテレビもすぐに生き返ってくれるだろう。 でも、きっと実業団駅伝はTBSの中継の下手さに、またイライラが募るに違いないな。