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午後の再放送に番組の力を見た


このところ民放で視る局というとフジテレビとテレビ朝日に偏っていることに気がついた。
チャンネル支配権は一緒に住んでいる姉が持っているので、彼女の見たいものに左右されているのも可能性としてはある。
ということは、姉の視聴しようと思う番組はCXとANBに多くあるということもいえるわけだ。
それは一般視聴者の視聴傾向の志向性が表れているといえなくもない。

そのフジテレビとANBは平日の午後、ゴールデンタイムで放送した番組の再放送を編成している。
中にはその夜に放送する番組のPR的な側面も持って放送されているようだ。
これを見ていて思い知らされるのは、ANBのサスペンスドラマの多さだ。
毎日午後2時から5時まで、1時間のシリーズものの連続ドラマと、2時間のドラマが組まれている。
2時間ドラマはきっと土曜サスペンスの枠で放送されたものだろう。
何度も繰り返し放送されるものがあるとはいえ、これだけの番組を毎日編成できるというのは、それだけの量を持っていることに他ならない。

暇に飽かして毎日こうした番組を見るとはなしに点けておくようになっている。
すると、ドラマ嫌いだった私にもそのおもしろさや楽しみ方が見えてくるようになる。
ストーリー展開や犯人探しは、作る側の意図とキャスティングを見れは、大体2~30分で分かる。
そこで意識が惹き付けられてゆくのはやはりストーリー展開の緻密さであったり、役者の演技であったりする。
もちろん、そこで描き出される映像にも注意は払うのだが、今までに本当に鋭い映像だと唸らされるものはほとんどない。
きっと撮影時間にそれ程の日数をかけられないため、画にこだわるというところまではいっていないのだろう。

そんな中で、ANBの「事件」というドラマが好きだ。
北大路欣也扮する国選弁護ばかりを受ける弁護士が被告と寄り添い、そこから事件の核心を詳らかにしてゆくというのがいつものパターンである。
今日、その7本目(件目?)を再放送していた。
自閉症の娘と弟のを持つ母親がトラックに正面衝突して、息子を死なせてしまった。
これが無理心中か、過失致死かで裁判が争われる。
その母親役に松下由樹。
その夫で多忙を極め、家庭を顧みない大蔵官僚に平田満。
検事役に平幹二朗という芸達者がそろった配役だ。

このドラマ、なにしろ法廷のシーンがすごい。
鋭く犯罪性を追及する平幹二朗と、それに対峙する北大路欣也の演技が良質の緊張感で繰り広げられる。
そしてその緊張感によって際立たせられる伊達弁護士(北大路)のやさしさ。
そして、多忙を理由に傍聴にさえ来なかった平田満が初めて証言台に立ち、事故の本当の核心を知らされた時の演技。
それらのシーンごとに、脚本や、演出の域を超えた役者の力を再認識させられた。

今流行の次々に人が殺されて、その犯人を探してゆくというものではないので、ある意味とても地味なドラマかもしれない。
あるのは、頑なな心を持った被告に対し、正面から向き合う弁護士との心の物語だ。
それはサスペンスではありえず、人間ドラマなのだ。
けれど、そこで私たちに見せられる俳優たちの名演技は視る者を惹き付けて離さない。
そして彼らによって高いレベルで良質のどらまにみがきあげられている。
こういうものは何度視ても飽きることはないし、毎回強く心を突き動かされる。

それにしても、我が古巣の日本テレビの番組は姉に付き合って視る「笑点」だけというのは、ちょっと寂しいな~。

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